Day7
いよいよ、この旅で最高地点のスリヤピーク(Surya peak)5,145mを目指す日、初の4,000mでの宿泊も夜中に何度かトイレには行くが高山病的なものはなく熟睡ができた。
ここ数日は午後に天候が崩れ出すことが多いので、荷物は最小限で行動を速くし午後には戻る作戦。
この日ばかりは下痢止めを飲んで準備万端。
昨晩も少し降ったのだろう、宿の人も驚くくらいの季節外れの積雪量で雪山の景色。普段は荒涼とした岩肌のようで、これはこれで得した気分だ。
日が出るまでは、靴下、手袋を2枚重ねても凍てつくような寒さのなか軽アイゼンを装着して白銀の中を進む。
徐々に明るくなり、遠くにマナスル、ガネッシュヒマールなど7〜8,000m級を望みながら、明日も通る4,600mの峠を目指す。
徐々に雪が深くなり、ルートも不明瞭になってくる。
「あれ?ガイドはここも地図を持ってない?」
夏のスリヤピークにはガイドしたことがあるけど、雪に覆われたフィールドでは道がわからない?
またしてもガイドの道案内が期待できない。
ジオグラフィカの地図と地形を見ながらルートを手探りで進むことに。
照り付ける太陽とラッセルで気が付けば汗をかいている、日焼け止めを念入りに塗りウェアを抜いで体温調節。
尾根を越えてもルートが見えない、切れた崖、右往左往するうちに最小限にした水と食料が徐々に底を付いてくる。ときおりボトルに雪を入れて体温で溶かす。
何度かトラバースしてルートを探すが5時間が経過して完全に手詰まり「4,860m」が今回の旅の最高到達地点となった。
ここでも途中からガイドは先に行ってしまい、下山するタイミングもルートも経験豊富なリーダーと自分たちで判断。
特殊なケースではあるけど、ガイド登山でも安心せずに道具も知識も経験値を上げておくことが大事だと実感した1日。
ピークハントはできなかったが青空のなか8,000mの山々を見わたし、ヒマラヤの雪に挑戦できたので満足感は高かった。
そして予想通り午後からは雪というか吹雪に。
DAY8
昨日のルート案内ができず、宿に帰ってから一言も喋らなかったガイドは、肉離れをした仲間に付いて最短ルートで下山をしてくれることに。
残りの5名は、昨日よりも雪の積もるラウリビナ(Lauribina pass)4,600mの峠を越え、クトゥムサン村(Kutumsang)2,470mを目指す。
峠までは昨日も通ったルートでお互いの体力も知った仲間で安心感がある。無事に峠を越えると、ここからはルートファインディングで踏み後のない雪原を進む。
手袋の枚数が少なくスマホを確認しやすいリーダーにジオグラフィカ(地図アプリ)でルートを確認してもらい、残りの4人で交代しながらラッセルをしていく。これが1番速い。自然とこんな体制が取れていた。
踏み抜いたり、見えない石につまづいたり、なかなか進まずルートファインディングに疲労してきた頃、Phedi high camp小屋が見えてきたが窓は板で覆われている。
「営業はしていないか…」「温かいチャイが飲みたかった…」
と落胆していたところ、小屋の中に反対側から登ってきたパーティが休憩をしていた。
「登ってきた踏み跡がある」ってこと?
チャイが飲めない落胆と踏み後がある歓喜が同時にやってきた。
「ここから道を探さずに進める!」
休憩すると足先が凍ってしまうので暖炉とチャイを目指し次の小屋まで先を急ぐことに。
反対側から来たガイドは、雪の上でも橋、階段、石畳全て完璧なルートを辿っていた。「ガイドの仕事ってこれだよな」って震えるほど喜んだ。
なかなか標高が下がらない3,500mを越える尾根、雪から雨に変わり、疲労を感じながら地面を見ながら黙々と進んでいく。
一瞬、樹林帯をでて空を見上げると雲が抜けていた。
遠くには満月と8,000mの山々、振り返れば必死に越えてきたゴサイクンドの山が我々を見送ってくれた。
「ご褒美はあるもんだな」今日の宿泊地まではまだまだ距離があるけど、しばらく景色を眺めていた。
ネパールに来て初めてのナイトハイク。
村直前で軍施設に迷い込んだりと最後の最後まで色々あったけど、ようやく20:00過ぎに目標としていたクトゥムサンに到着。
ここでも昨晩ゴサイクンダの宿のオーナーが次の宿へ連絡をしてくれていて「待っていたよ、冷えただろ」と薪ストーブを用意してくれていた。
安心感と達成感の中で飲むビールが最高に美味かった。
まだまだ下痢だけど…。